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その他 2022/05/27
不動産は人生で一番大きな買い物と言われるように、一般的には安くても数百万円~数千万円の出費が必要になります。
そのためローンを組んで購入するケースが多くなりますが、中には現金で買いたいと希望する人もいます。
本章では不動産の現金取引についてメリットやデメリットと共に見ていきます。
不動産の現金取引を規制する法律は今のところ存在しませんので、資金があるのならば現金で購入することは可能です。
実際、借金をするのが嫌だからという理由でローンを組まずにマイホームを購入する人は一定数います。
ローンを組むことはその後数十年間借金に拘束されることになるので、できれば避けたいと思うのは自然なことです。
ただ、売買取引の現場目線まで視点を落とす時、代金の支払い場面で現金を用いたやり取りができるかどうかは売り主の対応次第です。
売買契約時、あるいは物件引き渡し時の支払いの際に多額の現金を持ち歩くことは買い手側が良しとしても売り手側がリスクを感じて否とすることは十分考えられます。
現金は困るという場合は振込等で対応するしかないので、ここは当事者間で話し合って調整が必要です。
少し細かい話になりましたが、次項以降では不動産取引を現金で行うかローンを利用するかという視点で捉え、現金取引のメリットやデメリットを見ていきます。
ローンを利用すると金融機関に一定の手数料を支払う必要があり、これが地味に負担になりますが現金取引では不要です。
ローンの審査には数週間程度の期間を要すため迅速な取引ができませんが、現金取引ならば第三者の金融機関の関与がないので迅速な取引が可能です。
またローンを利用する場合、売買契約締結時にはローンの本審査が万一不可となった場合に備えて契約を白紙とするローン条項を設けるのが一般的です。
つまりローンの本審査が終わるまで契約の効力が一定期間確定しないことになりますが、現金取引ならばそのようなことがありません。
ローンはつまり借金をすることですから、自身の信用情報に影響が出ます。
現金取引では信用情報に影響しないので、例えば将来教育ローンを利用したいといった場面で審査に通りやすくなります。
ローンを利用すればその後数十年間は返済を続けていかなければならず、人生の多くの時間を借金に拘束されますが、現金取引では返済の負担を考える必要はありません。
ローンを利用するには担保の提供や保証人の用意をほぼ必ず求められます。
現金取引ならば保証人に迷惑をかける心配も要りませんし、抵当物を用意する必要もありません。
例えば再建築不可の物件など、融資が難しい不動産だとローンを利用できないことがあります。
そうした物件でも魅力があれば現金取引で購入することができます。
ローンを利用して不動産を購入する場合、ローンが残っている時期に売却の必要が出た時に問題となることがあります。
売却予想額よりもローンの残債の方が大きいオーバーローンの場合、設定された抵当権を解除できないため売りたくても売ることができません。
お金が必要で不動産を売りたいのにそれができず、困ったことになる可能性があります。
現金取引で購入すれば抵当権を付けられることはないので、好きな時に自由に売ることができます。
相続分野では現金の不動産化という形で相続対策が検討されることがあります。
これは現金と不動産で相続税評価の面で差が出ることを利用したものです。
相続税の計算をする際、現金はそのままの額で評価されるのですが不動産は国税庁が策定した財産評価基本通達というルールに則って価値を評価することになります。
このルールに従って不動産を評価すると、現金と比べてかなり割安で評価されることになります。
これは別に時価が下がるということではなく、あくまでも相続税の計算のためにする評価ですので、市場価値が下がるわけではないので心配は無用です。
相続税評価が下がる分、相続税の負担が下がるということで現金の不動産化がよく検討されます。
ローンを利用する場合、いわゆるレバレッジを利かせることができるので自分の保有する現金の額以上の買い物ができます。
ローンを利用できれば自分の力以上の資金力を発揮できますが、現金取引ではそれができないので購入できる物件の選択幅が狭まります。
現金取引では当然現金での支払いとなるので、大切な生活資金が激減することになります。
ライフプランに影響が出るリスクがある他、急病などで働けなくなった時の生活費や医療費などに使える現金がなくなるのは心理的にも不安が大きくなります。
ローンを利用する場合、金融機関が審査の際に対象物件の価値を評価するので、ローンの利用者はその評価を通じて物件の資産価値や安全性を見ることができるという利点があります。
現金取引では金融機関が関与しないので、物件の評価や安全性の確認は自分の責任で行わなければなりません。
現金取引を考える場合の注意点としては、金融機関の物件評価を利用することができないので、中古物件の購入においては瑕疵の発見が難しくなることです。
ホームインスペクションで隅々まで物件を調べて修理が必要な個所がないかどうか調査することができますが、これには費用がかかります。
近年は法改正がされて売買を仲介する不動産業者にホームインスペクションについて説明義務が課されたので、この機会をとらえて相談するのも一つの手です。
ホームインスペクションに係る費用は数万円程度で、売り主と買い主のどちらが負担するかは交渉で決めることができます。
折半という選択もできるので、中古物件購入の際には安全性の確保のために検討してください。
ホームインスペクションを実施しない場合、購入した不動産に不具合が確認された時に備えて、契約不適合責任についてはできる限り買い手側有利に設定しておく必要があるでしょう。
金額を安くする代わりに契約不適合責任を減免する交渉もよく見ますが、ホームインスペクションで安全性を担保していない状況では大きなリスクが伴います。
安く買えても住居として支障がある状態では安心して生活できませんから、ホームインスペクションで安全性を確認するか、契約不適合責任を契約上でしっかり明記して担保とするか、少なくともどちらか一方は確保できるようにしましょう。
本章では不動産の売買で現金取引ができるかどうか、メリットやデメリット、注意点などと共に見てきました。
現金取引自体は可能ですので、資金的に余裕があれば検討しても良いでしょう。
特に相続税対策を考える場合は積極的に余裕資金の不動産化を検討して良いと思います。
現金取引では対象物件の安全性の確保を自分の責任で行う必要がある点に留意し、メリットがデメリットを超えるかどうか、個別のケースで思案してみましょう。
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