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その他 2022/05/27
土地や住宅を売買するとき、しばしば「不動産」という言葉を使っているものです。
なんとなく不動産という言葉を発しているものの、いったい何が不動産に該当するのか、あまり意識していない人も多いのではないでしょうか。
実は、不動産が意味するものは幅広く、その由来を知るためには、歴史をさかのぼる必要があります。
そこで、不動産とはどのようなものを指すのか、その意味や由来を含めて解説したいと思います。
不動産が何を意味するのか理解するためには、動産の意味を合わせて理解することが大前提です。
動産とは、簡単に言ってしまえば、「動かすことができる」財産のこと。
民法の86条では、「不動産以外のものは、すべて動産とする」と定義されています。「すべてのもの」とあるだけに、動産に該当するものすべて列挙するのはほぼ不可能。
家庭に関わるものの限定すれば、家具、自動車、家電、衣料品、装飾品、食料などが挙げられるでしょう。
また、絵画やフィギュア、古物などのコレクターアイテムも動産に該当します。個人や組織が所有している船、飛行機、ロケットなど、大型で高額なものも動産に分類されます。
それに対して、その場から動かせないものが不動産、民法86条では「土地およびその定着物」と定義されています。
定着物を意味するものとして、建物、石垣、木々、動かせない石、橋などが挙げられます。
樹木に柿やキンカンがなっており、それが木にくっついている状態であれば、それも不動産と見なされます。
ただし、建物、土地、立木法で登記された樹木は、別々の不動産として区別。土地の上に建物があったら、その所有者はふたつの不動産を持っていることになります。
土地や建物を意味する不動産という言葉は、明治時代に制定された民法の定義に由来します。
明治29年に制定された民法にて、日本ではじめて不動産という言葉が導入。第86条1項に記された「土地及ヒ其定著物ハ之ヲ不動産トス」という一文が、不動産という言葉の由来とされています。
その語源とされているのが、フランス語で「動かないもの」を意味するImmobiliers。土地の売買について記載している項目にImmobiliersという言葉が登場するようです。
これまで日本では、土地のことを「地所」と呼ぶことが多かったのですが、フランスの民法の影響を受けて不動産と表現されるようになったと言われています。
土地の売買が法的に認められるようになったのは、不動産という概念が生まれるまえの明治5年。
太政官布告第50号の「地所永代売買ヲ許ス」という文言により、土地を売買することが認められました。
ただし、基本的に地所は土地のことだけを意味しており、そのうえにある家屋やビルは含まれていないため、矛盾が生じるようになります。
そこで、土地と家が取引可能な財産を意味するように、不動産という言葉を充てるようになったようです。
動産と比較すると不動産の種類はシンプルですが、日本が経済的に発展するとともに、その利用方法はかなり多様となっていきました。
不動産は、土地のみを意味する場合と、土地に何かがくっついている場合があります。
土地のみの不動産には、まっさらの更地の状態と、何かに利用されている状態と、ふたつの状態があります。
利用されている例として、田んぼや畑、駐車場・駐輪場、資材置き場などが挙げられます。ただし、そこに何らかの建物や設備がついている場合は、土地のみの不動産とは言えません。
土地に建物がくっついている不動産の利用方法は無限に存在しますが、おおまかに区分されています。
住居用建物に区分されるのが、一戸建ての住宅やアパートやマンションなどの集合住宅。生活スペースと商店、飲食店、病院等を併用している建物も同様に位置づけられます。
オフィス、銀行、お店、デパート、スーパー、ホテルは商業用の建物、工場や倉庫は生産・流通用建物、学校、図書館、公民館は公共用の建物に区分されます。
寺社や教会のような宗教建築物も不動産の利用方法のひとつと捉えられています。
現在は、不動産の所有者に固定資産税が課されることが定着していますが、その由来となるような税制の歴史があります。
土地に課される税金として有名なのが、お米のような現物もしくはお金でおさめる年貢です。歴史的には、平安時代末期から江戸時代が終わるまで、呼び名を変えて納められてきました。
納める年貢の量は土地から収穫できるお米などの量から算出され、江戸時代は五公五民あるいは四公六民が適用されることが一般的でした。
政権が江戸幕府から明治政府に移ったあと、土地を支配しているのは大名家だったため、政府は資金難という問題に直面します。
さらに、お米の収穫量でしか税額を決定できないという問題もあり、土地に関わる新しい制度が求められるようになりました。
そこで取り組まれたのが、年貢米を金納化するために、土地の価値を定めるということ。
これまでは、幕府が大名に土地を与え、それを農民が使用するという形態がとられてきました。
それでは明治政府が直接納税させられないため地租改正を実施、地価に税率3パーセントを上乗せした額を納付する仕組みをつくりました。
収穫物ではなく土地自体に課税するという点で、とも言われています。
実際に固定資産税が日本ではじまったのは、第二次世界大戦が終わったあとの米軍占領期です。
固定資産税が制定されたのは昭和25年。シャウプ勧告を受けたことがきかっけです。
シャウプ勧告とは、日本に取り入れるべき新しい税制を提案する、アメリカが派遣した日本税制使節団の報告書のこと。
使節団の団長が、コロンビア大学のカール・シャウプ博士だったことから、シャウプ勧告と呼ばれるようになりました。
シャウプ博士をリーダーとする使節団が日本に派遣されていたのは約4か月。日本各地を視察しながら、各所の財政担当者や学識者との意見交換を実施します。そこで練り上げられ、提案された新制度のひとつが固定資産税の導入でした。
固定資産税が導入されたことで、日本では土地や建物に等しく課税されるようになります。
当初の税率は全国で一律で設定されていましたが、今では都道府県・市町村などの各自治体が決めることが可能となっています。
導入されたときの税率は1.6パーセント。課税方法をめぐって紆余曲折を経るものの、現在は標準税率1.4パーセントの適用が一般的となっています。
不動産の意味は漠然としているため、動産と不動産の区別がごちゃごちゃしてしまうことも多いようです。
不動産と動産の境界線があいまいなケースであったら、専門家の意見を仰いだほうがいいこともあります。
不動産は高い資産価値があるため、その意味を明確に理解していないと、関係者のあいだで齟齬が生じることも少なくありません。
そのため、不動産を相続したり売買したりするときは、どこまで不が動産に分類されるのかチェックしておいたほうが安心です。
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